鋳
鍛
彫
漆
箔
房
心・技
各部の名称
image 鎧、兜を納める唐櫃(からひつ)に、一気に上塗刷毛を走らせる塗師(ぬし)。 下地におよそ十工程、そして上塗三工程のうちの最終。

唐櫃ばかりでなく、兜の錣(しころ)、鎧の各部を構成する小札板も塗師の手にかかるが、工程は唐櫃以上に複雑多様。
小札板に厚みをつける胡粉地(ごふんぢ)のように、下地の中には一つの工程を二十数回も繰り返すものさえある。
この小札板の最終工程である飴色の白檀縅(びゃくだんおどし)は、鎧、兜に一際華麗さを添える透漆(とうしつ)である。

image 漆は刷毛ばかりではなく、箆(へら)も使用するが、この箆造りができれば塗師も一人前三年はかかるという。 ちなみに、篦は塗師屋包丁と呼ばれるこの世界独特の刀を使って作られる。塗師は塗るという技術以前に悩みを二つ抱えている。

そのひとつは空中に舞う微細な塵、埃。
「夜露の出るような晩、琵琶湖に舟を出し、その上で仕事ができたらなぁ」という塗師の述懐は、塵、埃に対する切実な悩み、そしてもう一つの悩みである漆の乾燥にも及ぶ。
湿度乾燥の漆は、年間にわたって一定の気温、湿度を保たなくてはならない。漆の乾きに微妙な影響を及ぼす春の木の芽だち、湿気の強すぎる梅雨時、反対に空気がカラカラに乾燥する冬、塗師は自然とも戦わなければならない。
image
だから塗師仲間の日常の挨拶は、「どや、うるし乾くか」−。
伝統に培われた職人気質がいわせることばといえよう。