鋳
鍛
彫
漆
箔
房
心・技
各部の名称
image 一枚の金属板に、恰も鎧、兜の生命を吹き込むかのように、微妙に、そして時には力強く鉄槌を打ちおろす鍛金師。
旺盛な覇気を表わすかのような鼻、口、いかつく張った顎、そして皺の一筋一筋まで、表情豊かに面頬(めんぼう)がたたき出されていく。

面頬だけでなく、鍛金師の仕事範囲は極めて広く、鎧、兜の金属部全般の製作がその手に委ねられている。兜の鉢は短冊形の金属板を一枚一枚矧ぎ合せ、かしめられていく。
このかしめ具合が強すぎても弱すぎても、最後の一枚はその両端に合わされない。
image しかし、厳しい年輪を乗り越えてきた職人芸の確かさ、最後の一枚は寸分の狂いもなく合致する。 そして鍬形台(くわがただい)には微妙な曲線をたたき出し、そこに差し込まれる鍬形は、羽根鏨(はねたがね)をもって一つ一つその文様を刻み込む。

まだまだある。

小札板(こざねいた)の波出し、佩楯(はいたて)、篭手(こて)の鎖の編み上げ・・・。 これらのすべてはもちろん手造り、それだけに道具も多種多様、何十何百もの鉄砧(かなとこ)、金鋏(かなばさみ)、鏨(たがね)の類。

image この道具類の圧巻というべきものが、樫の木製の打ち台。金属板に突起部をつくる窪み、鉄砧を固定する四角の穴、そして何よりも切断面に走る木の年輪は、伝統の重み、風格さえも漂わせる。

この打ち台に固定された鉄砧の上面が鏡のように磨き上げられているのは、これを持って己の天職と心得る伝統職人の心意気を表しているといえよう。
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