鋳
鍛
彫
漆
箔
房
心・技
各部の名称
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坩堝(るつぼ)から溶湯が流れ出る。湧きおこる白煙、鼻をつく異臭。
千二百度の高温に溶湯は眩しいばかりの光を放ち、注ぎ手と支え手二人の鋳物師に照り映える。
鋳物のクライマックスともいうべき火入の時。

image 武久の鎧、兜に華麗な趣きを添える飾り金具は、京型鋳物師の手によってつくられる。この元禄の時代から受け継がれてきた京型鋳物師は、いまや京都はおろか日本全国にも唯一。京型の名を冠すその特徴の一は、三十から六十もの鋳型に連続的且つ一時に溶湯が注入できることにある。
それだけに工程もまた独特。

まず、「真土(まね)」という特殊な土の板に鋳型を叩き出すと一定の高さに積み上げ、溶湯の流れ道をつくる。
それを荒土で覆ったものを外型とし、素焼状にした後、溶湯をそそぎ込む。その後、しばし冷却、形を壊して鋳物を取り出すのである。

image火入の時は月に二度。
他の二十数日は地味で単調、しかし永年の修練を要する型づくりの日々。この型づくりに使用される叩き棒は、樫の木でできているにも拘わらず、幾千幾万回かの使用に耐えるうち、握る部分が磨耗し、意識外の造形ともいうべき形状を成す。

ある意味では、繰り返しの世界ともいうべき伝統技の所産がここにある。
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