しころ


錣

この部分もアルミ着色という大量製法が主流を占めていますが、武久の場合は頑くなに金箔押(きんはくおし)を守り続けています。また、錣を構成する小札板(こざねいた)についても、全体に調和のたれた威(おどし)を施すために、まず小札板を兜鉢の形に一つ一つ合わせて曲げた後に威すという気の遠くなるような手間暇をかけています。確かに小札板を直線のまま威した後に曲げるという方法もありますが、威糸(おどしいと)に無理が生じ、威糸間にすき間やばらつきが目立つという結果になりがちです。全体の調和、威毛(おどしげ)の優美さを重んずるとき、やはり昔ながらの手法を、採用せざるを得ないのです。


錣